上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

--/--|スポンサー広告||TOP↑
鉄工街から飛び立った浮遊砦。風を受け、どこかへ走りゆく。

雲のまにまに、ときおり顔を見せる午後の太陽。
やがて砦は、耶呆島の一端にさしかかる。

大きな町があった。町は大きいが、大きな建物は見当たらない。住宅ばかり。
家々はどれもよく似ていた。色違いの屋根、けれど同じような造りの二階家が軒を連ねている。
どこかの都市のベッドタウンなのかもしれない。
見分けのつかない家々に住むは、没個性のつまらない住人達か。それとも・・・

「どういう町?」
櫓を登ってきた御津流。手すりに留るクチダケ鳥に並び、町を見降ろした。
「見たとおり、フツーの町や」
「それにしては、なにか思うところがありそうな」
「あら、あたり。この町・・・ちっと前、天災があってな。善意之天災、ゆうてな」
御津流は、まだ知らない。
「まあそれはええけど。どうせこの町、回復めっさ早いし。みんな、そんなこととうに忘れとるわ。けどな・・・」
クチダケ鳥がうじうじ話だしたら最後。
「うちはいろいろ考えてん。うちの知り合いにラブリ~な兎さんがおって、その知り合いに牛飼い男はんがおって、彼モーええこと言うとったなぁ。善とはなんやろな、と」
その話の、まあ長いこと暗いこと。
「けど、うちの考えはまた違うねん。優しいに本当とか適当とか嘘とかあるんやろか。あの天災みたら、考えずにいられんわ・・・」
御津流はそっと席を外した。

クチダケ鳥の陰気な思考が、砦の地場に作用したらしい。
その夜はみな、優しさがどうの善がどうのという話題に吸い寄せられ、ひとしきり語り明かした。

海風が腕組みする。
「『偽善は少なくとも悪ではない』て聞いたことあるけど。めがっさ名言だねー」
智庵が黙想する。
「アカルマとヴィカルマと説教族の相関性を考えてみます。私も善業積まなくては
御津流が閃く。
「受け手がありがたくなくてもありがとうと言うのは・・・そっか、優しさカウンターだ!
クチダケ鳥が額をカリカリ掻く。
「優しさ・・・送り手側の気持ちを優先するか、受け手側の評価を優先するか、そこがむつかしぃねんな」
キィがポケットを探る。
「非常に難しいですね。互いの歯車が咬み合わなければ・・・」
チィン!という金属音。
キィのポケットから、なにかがたくさん転がり出てきた。

「ケケ殿とお会いした街で、拾ってきました。おもしろいでしょう」
歯車だ。大きさ、材質、形状。似ているようでいても、どれひとつ同じでない。
硝子細工の歯車をひとつを手に取り、智庵が言った。
「これに心惹かれます。ところで。どうおもしろいのですか」
キィは黒光りする歯車を手に取った。
「形状、材質、大きさ。それぞれに咬み合わせ、つまり相性があるのです。たとえば・・・」
海風が察した。歯車の山に、フッと息を吹きかける。
歯車が次々と宙に浮き上がる。

「この鉄の歯車。相手も鉄の歯車だった場合、相性は両極端に二分される。歯車の形状が同一で噛み合わせが良ければ、相乗的に力を発揮できるという相性。歯車の形状が異形であれば、常に火花を散らす相性」
ポンと放ったキィの歯車が、スッと智庵の歯車に飛び寄る。
智庵の手の中の歯車が、繊細に震えた。
「智庵殿の硝子の歯車は、脆い。形状が同一なら良いが、相手が異形だと壊れてしまう。片方が壊れてしまっては、交流の糸口は掴むことは不可能でしょう」
「壊れるのはいやです。お引き取り願います」
智庵は硝子の歯車を、そっと掌にしまった。
鉄の歯車が、相手を探し宙を漂う。と、白く濁った不思議な材質の歯車がスイと近づいた。
「それはシリコンの歯車。柔軟に圧力を受け止めます。常に柔軟に対応することで、逆に相手を手玉に取ることもできる」
キィは続けて、隣の海風になにごとか耳打ちした。
うなずく海風。宙に人差し指を立て、タクトを振る。
たくさんの歯車が、一斉に回転しはじめた。相手を求め、ワルツを踊るように空をさまよう。
あちこちで、チィン!と怜悧な音が響く。そのまま噛み合う歯車もあれば、すぐに離れるものも。
キィが空の一点を指す。三つの歯車が見事に咬みあい、高速で回転していた。
「歯車の相性自体が良くとも、接点に於ける進行方向が合わなければ衝突します。そういうときは、第三の歯車が間に入ると解決できる
御津流が苦笑いする。
「間の歯車、かあ。ペースが遅い僕は、三人以上いると置いてきぼりを食うよ」

と。空間のかたすみから、呟くような声がした。
「第三者の歯車・・・一番得なのは『大気の歯車』かも。いや、『大気の歯車』は間に割り込まないのか」

えっ? と振り仰いだ五人の頭上に、不思議な歯車が浮いていた。
透き通っている。輪郭だけが、空にくっきり浮かび上がり。
材質は・・・シリコンのような、硝子のような、大気のような。
「誘結印の生産工場から来ました。みなさんのお役に立てるなら嬉しい」
鉄工街からこっそり乗り込んでいたらしい。
クルクル回りながら、不思議な歯車は「Zeta」と名乗った。





異文化交流議論と切り離されながら、メンバーの動向に強い影響を与えた議論があります。Yahoo!Blogsに搭載されている「転載機能」をめぐる議論記事群です。
 ◆Y!B天災機能 INDEX
「転載機能」とは、Yahoo!ブロガーが書いた記事をYahoo!ブロガーならば誰でも無制限に転載(複製)できるという機能でした。素人が作成した不完全な記事が無制限に拡散する危険性があること、著作権法に抵触する可能性が高いことなどから、Yahoo!Blogs内外で活発な議論が交わされました(※2007年2月の仕様変更により、前記の問題点はほぼクリアされたと考えます)

この記事で紹介した「優しさ(善)」をめぐる考察記事群。
2006年末、転載機能を使って大量に転載されたあるYahoo!ブロガーの記事がきっかけとなり、転載機能の是非をめぐる議論が非常に過熱した。その様子をROMしていた私(わたりとり)が抱いた強い疑問が、発端となっています。

「優しさ」は、「説教族」というテーマ(chargeup氏)で、また「善」というテーマ(わたりとり)で、異文化交流議論に繰り返し姿を現します。なかなかに離れがたい、厄介なテーマです。

 ◆異文化交流議論リンク集-03.優しくするという事
スポンサーサイト
08/11|浮遊砦コメント(2)トラックバック(0)TOP↑
この記事にコメント
00を見た
Zetaさんで誰だっけと思ったらZさんでしたか。お懐かしい。
今も大気の歯車していらっしゃるでしょうか。
From: chargeup * 2007/08/11 20:38 * URL * [Edit] *  top↑
大気の歯車
という印象を私も持っていたのですが、御本人が「自分はシリコンか硝子」とコメントされていたので、素材不明にしました。

「zeta」、ギリシア語「Z」の呼び名だそうです。
ギリシア語アルファベットって呼び名が綺麗ですね。シータとか。
From: わたりとり * 2007/08/11 22:33 * URL * [Edit] *  top↑
名前:
コメントタイトル:
メールアドレス:
URL:
コメント:

パスワード:
管理人だけに表示:
管理者にだけ表示を許可
この記事にトラックバック
最近の記事
プロフィール

wataritori

Author:wataritori

最近のコメント
カテゴリー
最近のトラックバック
リンク
ブロとも申請フォーム
ブログ内検索
RSSフィード
FC2カウンター
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。