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風が乱れた。一陣のつむじ風。砦のはるか上空へ駆け昇る。

「海風殿か? どうしたのだろう」
キィが風の行方を見上げる。
物見櫓の突端から、クチダケ鳥が無言で飛び立った。
「いったいなにがあったの? 僕、様子を見てくる」
御津流が跳ね橋門に向かう。智庵は黙ってその背を見送った。

 * * *

長い長い経緯(いきさつ)がある。
  善意之天災。
  議論は過熱し。
  嘲笑が渦巻き。
  言葉狩る者達の過ちが。
  かけがえのない言葉たちを、この世界から抹消した。
人と人との交流のかたちの、最も望ましくないありようが、赤裸々に繰り広げられた。

海風が創作した一遍の戯曲。
長い長い経緯には一言も触れていない。しかし、見続けていたからこそ生まれた。
その曲は「かけがえのない言葉たち」を留保無く抹消した耶呆島政府と「天災システム」とを、ケラケラに腐し倒していた。それらこそが最悪の結末をもたらした元凶であったから。
冗談の体を借りていたが、その芯は、憤りだった

よりによって、その曲が、パクられた。
よりによって、一連の経緯の中心に居た人物の手で。
よりによって、耶呆島政府と天災システムを礼賛する偽曲へと姿を変えて。
よりによって、天災システムに負け戦を吹っかけ続けてきた、クチダケ鳥の目の前で。

海風は馴染みの古巣からも浮遊砦からも離れた。怒りを制御するため、いずこかへと飛んだ。
クチダケ鳥も姿をくらました。耶呆島の偏屈岩窟の扉には、一枚の書が貼り出された。

浮遊砦の六人には、共通の気質がある。
自分にとって気に喰わないなにごとかが起こったとしても、それだけの理由で他者を批判することを良しとしない。ただ批判したいがために、ましてただ相手を傷つけたいがために、他者を指弾するような文章は打たない。
他者のためではなく、自分のための矜持。

 * * *

十日が過ぎた。人気少ない浮遊砦。
跳ね橋門の前を、智庵が手持ち無沙汰げに、袖に手を入れぷらぷら歩いていた。

と、はるか上空で、誰かが叫んだ。
「うちのことかー!」
驚き、空を仰ぐ智庵。その目前に。
何かがボトッと落ちてきた。絞ったまま干乾びた雑巾のような・・・
「??」
地面に半分埋まり潰れているのは・・・
「ほんとに、ろくでもないねぇ~・・・」
「クチダケさん?」
さらに、デカイ男が空からドスーンと落ちてきた。
「ぼ、僕にも刺さった・・・」
「海風さん??」
さらに、海風の隣から別の声がした。
「私も『160km/hの剛速球』が脳天に命中しました・・・」
「その声は、ケケ殿!?・・・いらっしゃるなら服を着てくださいな。驚きますから」
どこからか取り出した服をケケがモソモソ着終わる頃、クチダケ鳥と海風もフラフラ立ち上がった。
御津流が駆け寄ってきた。
「あ、帰ってきた! どうしちゃったのさ、いったい」
そのとき、誘結印から乙女が姿を現した。児兎だ。
ヘロヘロに立ちよどんでいるクチダケ鳥、海風、ケケの姿を見て、あんぐり口を開けた。
「ありゃりゃ。思わぬ余波があらぬ方向に広がってる。。。」

わたしの嫌いな文章
内省・自己観察の形をとりながら、他者に反省を促すことを企図している文章。
自分が内省的であり、謙虚であり、寛容であり、なおかつ未熟で不十分であるというセルフイメージを、他者も承認すべきであるとそれとなく強要する傲慢な文章。


児兎のこの呟きが、「内省族であること」に自呪縛されていた三人を直撃したのだった。

「・・・お、嬢さん。いらっさい」
いまだヨレヨレのクチダケ鳥が、ニンマリ笑う。
「そっちに内緒で自首したの、二人おるってか? 誰と誰やろ。けっけっけ」
「一人はおいらだよん」
海風があっさり口を割った。
パクリ騒動いらい、脳内キャラを9名も創設して己の感情制御に四苦八苦しているところへ、ブッスリ効いたらしい。
「ゲッ。海風はん、自己申告かや。しゃあない、ゲロったろ。もう一人はうちや」
「みなさん、ごめんなさい」
すまなさそうにする児兎の横で、智庵が顔を曇らせた。
「それはそうと、気になることが。あれいらい、砦がまったく動いていません」
えっ、とみなが顔を見合わせる。
キィが「そういえば」と櫓の向こうを指さした。
「この砦、裏手に碇がありましたね。もしや」

案の定。
裏庭の底なし井戸に、銀色の碇が投げ込まれていた。
井戸の横に据え付けられた大きなドラム。巻き取られていたはずの鎖が、すべて解けている。
伸びきった鎖を、男性陣そろって引き上げようとした。が、ひと鎖も動かない。
「厄介ですね。誰だろう、こんなことをしたのは」
空中で見物していたZetaが言った。しかし誰も身に覚えがない。
海風がむーんと腕組みする。
「魔法の碇だからな。前に言ったよね。僕たちが留まるべき場所では、勝手に利くのかもね。留まる理由が解消するまでは」
クチダケ鳥は難し顔だ。
「内省族のジレンマ、ってところやな・・・」
智庵はますます顔を曇らせた。
「このまま、旅がうやむやに止まってしまわないでしょうか」


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2007年が明けた。浮遊砦の旅も小休止。
メンツはおのおのの家に戻り、年賀の客のもてなしにいそしむ。
智庵の庵でも、新年の宴が催された。

「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
智庵が一礼する。一同、祝いの酒盃を高く掲げた。「乾杯!」
節料理をつまみ、一杯目の杯を空けたころ、智庵が大きな巻紙を取り出した。
「書初めをいたしました。感想をうかがいたいのですが」
パラッとほどいた縦長の和紙には、達筆で十二訓、したためられている。
「原本は、昨年触発された、マキャベリの『君主論』。いかが」

リアリストの智庵らしい、身が切れそうに鋭利なブロガー訓

1 突然ブロガーになった者が最初にやらなければならないのは、テーマを決めることである。
2 新しくブロガーになった者は、荒らしから身を守る方法を考えておかなければならない。
3 ブロガーは、できるだけたくさんのファンや常連を獲得しなければならない。
4 新人ブロガーは目標とする超人気ブロガーを持たなければならない。その目標は高ければ高いほどよい。
5 ブロガーがよりよい記事を書こうとすることを怠ればファンに見放される。
6 ブログが方針を変えざるを得なくなった時は一夜にして変わるべきだ。
7 はてなブックマークされたいと考えるなら権謀術数を習得せよ。
8 ファンの中に立派な助言者がいるからアルファブロガーと呼ばれる。
9 新しいコメント者が危険かどうかを把握するため、ブロガーはしっかりと目を見開いていなければならない。
10 コメント欄の意見には耳を傾けるべきであるが、複数の意見を聞いていると結局考えがまとまらなくなる。よい意見はブロガーの思慮から生まれる。
11 ブロガーがファンの支持を得るのは簡単だが、その支持を保ち続けるのは難しい。
12 同じタイプのファンばかりだと、ブログのパワーが落ちていく。


一同から歓声が上がった。「おぉ~!」
クチダケ鳥がケラケラ笑う。
「第六訓がええわ。うちも変わるときは一夜で豹変したろ」
海風も手を叩いて喜んでいる。
「もとネタ知らなくても面白いよ。この書きかた、他にも使えそう」
「他・・・耶呆島限定ならこんなふうでしょうか。『新しく耶呆島ブロガーとなった者は取り潰しから身を守る方法を考えておかなければならない』」
御屠蘇で頬を紅くした児兎は、笑いながら嘆く。
「シビアだ!悲しき耶呆ブロガー。。。」
智庵には冗談で済まないらしい。声は沈んでいた。
「また、あったようです。怖いです。朝起きたら自分の庵がない、なんてことになったら

耶呆島の為政者は、なんの予告もなく住人の家を取り潰すことがある。
耶呆島政府を批判した者。きわどい書を公にした者。隣人との小競り合いが絶えなかった者。
・・・とはいえ御家取り潰しの真の理由は、わからない。いっさい説明がないからだ。
智庵の右隣のマッチョムキムキ男が、一句ひねった。智庵の友人で、川辺という。
「『真の耶呆ブロガーは悪態をついてはならない』なんてね」

「巨大F連邦、海上S都市、E牧歌国・・・移転先を考えてもみたけれど、どこも怖そうです」
新しい土地・新しい人間関というものに馴染みにくい性質の人がいる。智庵は殊にそうだった。
「なんだかんだいって、やっぱりこの島が一番なのです。こうして客人との会話も弾みますし。不思議なこと」
海風が「そういえば」と口を開く。だいぶ酔いが回っている。
「H自治区から来た旅人が言ってた。ここの住人が会話好きなのって、島の創り・・・つまりシステムによるのかもって。システムが住人の性向を決める、という仮説は成立するのかな」
F共和国の住人、御津流がチン!とカップを弾き鳴らす。
「成立するに一票!」
児兎が首をかしげた。
「わたし、L合衆国にもS都市にもいたけれど、自分の趣味とか日常とかしか興味がない人はどこの国に住んでるかなんて気にしていなかったわ・・・」
「んじゃ、この仮説はどう?」
海風がカップに茶を注ぎ、ソーサーを逆さにしカップに蓋をしてしまった。
「囲い込み性の高いシステムの場合、独特の文化(空気)が発生する。たとえばS都市なんかは基本設計がM-Type、つまりグローバル設計だね。対して、この島やH自治区なんかは、住人同士の交流を促進するシステムが基盤に組み込まれてるから、特定の空気が形成され易い」
御津流は笑っている。
「交流か・・・家にお客さんが来れば住み続けたくなる。為政者が納税者を確保するって狙いだよ、きっと」
そのとき、智庵の左隣から、控えめな女性の声がコショコショと漏れた。
「F連邦に家を建てたら、通りすがりの方から声をかけられてビビりました・・・」
智庵の旧い友人、ファラだ。耶呆島住人だが、E牧歌国にも家を持っている。
「E牧歌国は自分のペースでやれそうな気が・・・なぜかって具体的なポイントはないけど」
交流の緊密さを肌良く感じるかどうかは人による、ということだろうか。

もう夕暮れ時。けれど宴はまだまだ、これからだ。
テーブルから料理と酒が消え、かわりに、とりどりの茶を入れたポット、砂糖とミルクが並んだ。
児兎が手作りのクッキーを配りながら、なんとなしに言った。
「他の国の評価や交流の特徴、聞いてみたいです」
「面白そうですね。では私から話しましょうか」
智庵がうなずいた。智庵はアメーバ公国に、別宅を持っている。
と、庵の戸口から呼び鈴が鳴った。来客らしい。
「あら、また賑やかになりそうですね」
迎えに立った智庵が扉を開ける。

不思議な客人がたたずんでいた。いや、人ではなく・・・
ふさふさの尾と、茶目っ気あふれる瞳と、尖った隠し爪を持つ、獣。
「あや? 狐はん!」
クチダケ鳥が、パカっとクチを開ける。
善意之天災がらみで知り合った、異国出の友人だった。

狐は礼節正しく挨拶を述べる。
「初めまして。あちこちの国を彷徨う流浪民です。歌檀と申します」
それから尾をくるりと立て、にっこり笑った。
「異国語りと聞きつけて、飛び入りに参りました ミ^。^彡」

09/15|浮遊砦コメント(10)トラックバック(0)TOP↑
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